この記事は2023年10月にサービスが終了した読書サイト『シミルボン』に投稿していた記事である。ボクの読書メモに「20.4.11 第四章が最も面白い」とあるので、おそらく2020年4月に投稿したもののようである。
ウェーバーの主要な著作群を取り上げて、要点を引用しながら解説している好著。ウェーバーの著作(の翻訳)をいきなり読む前に読んでおくと、予備知識を得ることができるし、逆にウェーバーを先に読んでから本書を読むと、「そういう読みもあったか!」という発見もある。現代の事例も挙げながら解説してくれているのが理解の助けとなりありがたい。
第一章ではウェーバーの著作で最も知られている『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』が取り上げられる。決して読みやすくないウェーバーの名著の概要が分かるだけでなく、アダム・スミスやジョン・ロック、カール・マルクスなど他の思想家との関連の中で、ウェーバーの立ち位置がどのようなものか解説されている。
第二章は政治をテーマとして『職業としての政治』および『官僚制』が取り上げられる。ウェーバーが見出した、政治指導者と官僚、そして民主制の主体たる大衆の微妙で皮肉な関係について理解が深まる。
第三章はウェーバーの方法論に着目し、『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』と『社会学の基礎概念』が取り上げられる。方法論なので他の章よりも難解な気がするが、その分適用範囲も広い。重要タームである「価値自由」と「理念型」や、「理解社会学」の特徴とそれが対象とする「社会的行為」についてまとめられている。
第四章はウェーバーの学問観を示すものとして『職業としての学問』が取り上げられる。学問の世界でも官僚主義と資本主義化が進んでいくというウェーバーの指摘と、ウェーバーの指摘通りのことが日本のアカデミズム界でも進展した結果、例えばSTAP細胞騒動が生じたことが解説されている。その他、学問に携わる者に必要なこと、近代化を進めてきた学問の性質と近代化された社会における学問の意義が説明される。
著者は「序」において、「本当に職業的に学者になる意志はなくても、読んでいる間だけは、「学者の卵」になったつもりで細部に拘りながら読み進めていかないと、本当の意味で、古典を「読んだ」ことにはならない」と述べている。本書はまさに本当の意味でウェーバーの「古典」を読むための格好の手引きだと思う。
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