汗牛足vol.28 死刑制度について哲学的に考察した結果。
萱野稔人『死刑 その哲学的考察』ちくま新書 死刑は命を奪う刑罰である以上、当然重いテーマになりますが、それについて本書とともに考えをめぐらせることはとても良い哲学的思考の練習になるとともに、筆者の論展開はなかなか鮮やかで、楽しませてもらいました。「哲学的考察」と聞くと難しそうで読む気がしないという人もいるかもしれませんが、文章は平明でくどいくらい丁寧なので理解はしやすいです。この本のよいところは、「死刑は廃止すべきだ」「廃止すべきでない」といった結論ありきの議論ではなく、あくまで死刑そのものについて考察しよう、結論はその上で導き出そう、というスタンスを取っていることです。