汗牛足vol.8 失敗の本質
戸部良一 他五名『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』アジア・太平洋戦争(大東亜戦争)について、あのような戦争の惨禍を二度と繰り返さない……というのが常套句になって、平和主義からは絶対悪のようなイメージを塗られ、こんなに多くの人々が犠牲になったとか、あるいは勝てる見込みもない戦争をして、なんてバカなことをしていたんだろうという見方が広まっている、という印象を抱いています。それが悪いと言うつもりはないのですが、ぼくが前から疑問なのは、そうやってあの戦争をマイナスのヴェールで包み込んでいる限り、そもそもあの戦争はどのように始められ、どのような経緯を経たかという肝心の点が分からないままではないか、ということです。