ノンフィクション

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汗牛足vol.38 ホモ・デウス――人類の未来を考える

ハラリの『ホモ・デウス』はサピエンスの未来に重点を置いています。ただし、この本は人類の未来を予言したり予想したりするものではありません。ましてや、我々はこのような未来を目指すべきだ、といった指針を示す本でもありません。この『ホモ・デウス』で提示されているのは、「我々はどこへ行きたいのか」を考えるための材料なのだと思います。結局のところ、未来がどうなるかなんて誰にも本当のところは分かりません。しかし、本書を読んで過去と現在についての理解を深めることで、人類の未来についてもっと豊かに想像することができるようになるかもしれません。
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汗牛足vol.37 サピエンス全史――実は人類は幸福になっていない?

今回も引き続きユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』を取り上げます。科学革命がもたらした変化の後半戦を取り上げたうえで、本書の本丸とも言える、サピエンスの幸福に関する興味深い議論を紹介します。ここまで過去500年の科学革命の流れをざっと見てきました。確かにホモ・サピエンスは繁栄し、物質的にはるかに豊かな社会、より安全でより長生きできる社会を作り上げました。しかし、とハラリは問います。「私たちは以前より幸せになっただろうか?」
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汗牛足vol.36 サピエンス全史最大の難所、「科学革命」が深い

ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』科学革命と聞いてあなたは何を思い浮かべますか?コペルニクスの地動説でしょうか、『方法序説』のデカルトでしょうか、「知は力なり」のフランシス・ベーコン?いやいや、やっぱり「プリンピキア」こと『自然哲学の数学的諸原理』を著したニュートンでしょうか。いずれにせよ、17世紀ごろにヨーロッパで始まった近代科学の勃興を思い浮かべる人が大半だと思います。しかしユヴァル・ノア・ハラリの描く「科学革命」はそれとはどうも雰囲気が違うのです。
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汗牛足vol.35 サピエンス全史――21世紀必読のベストセラー

ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』この本は人類、とりわけ私たちホモ・サピエンスのこれまでの歩みをマクロな視点から描いたものです。本書によれば、人間の歴史の大きな流れは3つの革命によって決定づけられました。すなわち、認知革命、農業革命、科学革命の3つです。本書の記述は、これらの革命が人間の文化・文明に与えた影響を軸にして、それに関連する豊富な話題を織り交ぜながら展開していきます。
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汗牛足vol.33 「自然淘汰」のメカニズムを知ると世界観が変わった。――利己的な遺伝子、気まぐれなミーム

ドーキンス『利己的な遺伝子 40周年記念版』 今回取り上げたいのはR・ドーキンスの『利己的な遺伝子』です。初版は1976年の本なのですが、40周年記念版が出版されているというのですから紛れもなくロングセラーですね。間違いなく「古典」の部類に入る、入っていく本だと思います。
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汗牛足vol.32 文明化が人体にもたらした光と影――肥満になる意外な理由

リーバーマン『人体六〇〇万年史』 今回は、前回に引き続いてダニエル・リーバーマンの『人体六〇〇万年史』の紹介です。前回は進化・ミスマッチ病・ディスエボリューションという、この本の基本的な考え方を紹介しましたが、今回はもう少し具体的な話ができればと思います。えっ、何の話だったっけ、という方は先に前回分をもう一度ざっと読んでみるといいかもしれません。
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汗牛足vol.31 現代人は体の使い方を間違っている?――進化と健康の面白い関係

リーバーマン『人体六〇〇万年史』 率直に言って、この本は抜群に面白かったです。そして面白いと同時に、自分の健康について考え直すのにいいきっかけになりました。著者はハーバード大学の人類進化生物学の教授だそうですが、こんなに一般向けに分かりやすくて質の高い(そして幅広い教養をうかがわせる)作品を研究者が書いたことに驚きです。
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汗牛足vol.27 自由意思は存在しない?脳科学で考える。

デイヴィッド・イーグルマン『あなたの知らない脳 意識は傍観者である』神経科学者による脳科学の本ですが、素人の私にはいろいろと発見がありました。一般向けに分かりやすい言葉で書かれていて読みやすい本です。個人的にはもう少し専門性というか、学術性が高くてもいいと思いました。
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汗牛足vol.26 人と、微生物と、抗生物質の奇妙な関係

ブレイザー『失われてゆく,我々の内なる細菌』この本を一言で表すなら、抗生物質の過剰使用に警鐘を鳴らす本でしょう。レイチェル・カーソンの『沈黙の春』の現代版といったところでしょうか。ぼくはこの本を読んでいろいろ認識を改めたところがあるので、以下ではそのうち3つについて書こうと思います。最初に書いた3つの質問に答えながら述べていくことにしましょう。
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汗牛足vol.15 チェンジング・ブルー、必読のノンフィクション

大河内直彦『チェンジング・ブルー 気候変動の謎に迫る』この本は地学の中でも気候やかつての地球の様子について書かれているものですが、いやはや、その話題の面白さにすっかり引き込まれてしまいました。著者は気候変動の歴史を学ぶ学生のための副読本としてこの本を作ったらしいのですが、一般人が読んでも相当に面白い。成毛眞という実業家でノンフィクションを紹介している人がいるのですが、その人が絶賛して知られるようになり、文庫にまでなったという本。