読書 漱石の『門』 ―なぜ宗助は座禅に行ったのか。 『門』は難しい小説だと思う。独特の浮遊感があり、夫婦の生活に密着しているはずなのに生活している感じがしない。例えて言えば、生きているはずなのに黄泉の世界で暮らしているような感覚である。主人公か座禅に行く場面があるというので、なぜ座禅に行く気... 2024.05.19 読書
読書 三銃士v.s.モンテ・クリスト伯、どちらの方が面白いか? アレクサンドル・デュマの『三銃士』と『モンテクリスト伯』を読んで。 どちらもアレクサンドル・デュマ(ペール)の有名作ということで、立て続けに読む。三銃士の方は大変面白く、一気に読んでしまったが、モンテ・クリスト伯は長すぎて途中だれてしまった。 イギリスの作家、サマセット・モームは『読書案内』において、三銃士について次のように記している。 2024.04.14 読書
読書 ツルゲーネフ『父と子』 ロマンチストとニヒリスト 19世紀ロシアの作家、イワン・ツルゲーネフの代表作。「ニヒリスト」という言葉を有名にしたという点でも重要な作品だと聞いていたが、作中の「ニヒリスト」は決して厭世家ではない。作中の青年アルカージイはこう解説している:「ニヒリストというのは、いかなる権威の前にも頭を下げぬ人、いかなる原理も、たとえその原理がひとびとにどんなに尊敬されているものであっても、そのまま信条として受けいれぬ人をいうのです」 2024.04.14 読書
読書 死せる<魂/農奴>をめぐる詐欺師チチコフの遍歴。 N.ゴーゴリ『死せる魂』19世紀ロシアの作家ニコライ・ゴーゴリの代表作。物々しいタイトルと全三巻の分厚さに怖気づいて積ん読状態だったが、読み始めると想像以上の面白さで一気に読んでしまった。 主人公のチチコフは、戸籍上は生きているが実際には亡くなった農奴を買い取り、それを担保に銀行から金を借りてずらかることを画策する。言わば詐欺師なのだが、持ち前の洗練された物腰で人々に巧みに取り入る。死んだ農奴を買うという非常識な行為に対して地主たちが示す困惑・抵抗と、それを説得したりやり込めたりするチチコフの弁舌が見どころ。 2024.04.14 読書
読書 ゴーゴリが拡大する人間の醜さについて 19世紀ロシアの作家ニコライ・ゴーゴリの作品3作を読む。 「外套・鼻」は6年ぶりに再読。当時はB5ノート5ページにわたって感想を記すほど興が湧いたが、今回は割に冷静に読んでしまった。 「鼻」は床屋の朝食から生身の鼻が出てきたかと思えば、その鼻が独り歩きして紳士として振る舞ったりするなど荒唐無稽だが、一つの思考実験として面白い。 官職を求めてペテルブルグに滞在中で、プライドが高く大の女好きのコワーリョフにとって、鼻がなくなるという事態は社会的な死を意味した。 2024.04.14 読書
読書 岩波文庫で歴代最長タイトルの小説を読んでみるとくだらなすぎて戸惑った話。 1927年の創刊以来、現在まで存続する岩波文庫に収められた数々の作品の中でもおそらく最長のタイトルを有する本は、早くも創刊翌年の1928年に出版された。そのタイトルは、『イワーン・イワーノウィッチとイワーン・ニキーフォロウィッチとが喧嘩をした話』である。19世紀ロシアの作家・ニコライ・ゴーゴリ作の小説で、2018年にリクエスト復刊された際に購入したまま放置していたのだが、先日何とはなしに一気読みしてしまった。 2024.04.14 読書
読書 汗牛足vol.25 ガリヴァーvsクルーソー イギリスの植民地主義をめぐって 前々回に、『ロビンソン・クルーソー』は掠奪から植民・貿易へと転換するイギリス社会という時代背景と密接に関わったリアルな本だったと書きました。それだけに主人公クルーソーはまさにこの時代の申し子であって、プランテーション経営にも乗り出しますし、奴隷の密貿易も計画していたわけです。ところがガリヴァーは違います。そもそもガリヴァーはあくまで船医として船に乗っていたので、彼は直接貿易に関わっていたわけではないのです。 2024.04.14 読書
読書 汗牛足vol.24 ガリヴァーは人間嫌いだった!? スウィフト『ガリヴァー旅行記』ガリヴァーさんは難破して小人の島に流れ着き、目覚めたら糸で体を縛られていた、それくらいは知っているけどそれ以上はハテナでした。ところがエラスムスの『痴愚神礼賛』を読んで諷刺の面白さに目覚め、この作品も諷刺文学の傑作と聞いてどんなものかと読んでみることに。諷刺そのものはイギリス史に明るくないのでよくわからないことがほとんどでしたが、個人的には『ロビンソン・クルーソー』より面白かったです。 2024.04.14 読書
読書 汗牛足vol.23 ロビンソン・クルーソーの無人島は絶海孤島ではなかった? ロビンソン・クルーソーって無人島で一人でサバイバルした話、という程度の認識しかなかったのですが、今年の夏になって初めて読んで、案外奥が深いと思いました。読んでいるときは少々かったるく、まあこんなものか、と思っていましたが、訳者・増田義郎の解説を読んでびっくり、蒙を啓かれる思いがしました。この小説は単に、絶海の孤島で自助努力した男の物語、あるいは孤独のうちに信仰に芽生えた男の物語にとどまるものではなかった! 2024.04.14 読書
読書 汗牛足vol.19 ラブレーが命懸けで出版した禁断の奇書 エラスムス、トマス・モアに続いて、今回はフランソワ・ラブレーの『ガルガンチュアとパンタグリュエル』を取り上げます!本書は全部で4巻ないし5巻からなる大作です。ジャンルは強いていえば小説。文庫本で結構な分量になります 2024.04.14 読書