文学

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汗牛足vol.18 「ユートピア」は「理想郷」ではなかった!?

トマス・モア『ユートピア』「ユートピア」という言葉は、理想郷ともいわれ、普通に用いられている語ですが、実はこの本がもとになっているんですね。実はこの造語にはある意味が込められているのですが、それについて触れる前に、本書の内容をざっと紹介しておきます。『ユートピア』は第一部と第二部の二部構成になっています:第一部は船旅で様々な国々を訪れたヒュトロダエウスという人物と、トマス・モアが友人を介して知り合うところから始まります。
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汗牛足vol.17 おバカの女神さま、バンザイ!

エラスムス『痴愚神礼賛』「痴愚神礼賛」とは、いかめしい感じのタイトルですが、「おバカの女神さま、ばんざい!」という程度の意味です。話の筋は、悪しきざまに思われている「痴愚女神」が、「みなさま」を前に自分で自分を褒めたたえる、というシンプルなもの。痴愚女神いわく、「私は人間どもの恩知らず、というか無関心にはただただ呆れ果てています。万人こぞって私を崇め、私の恩恵を受けていると感じながら、かくも何世紀にもわたって、感謝の弁舌をふるって、痴愚女神を礼賛称揚する人物が一人としていなかったのですから。」